2016年7月28日

それぞれの症状に合わせた配合と処方が大事

それぞれの症状に合わせた配合と処方が大事大学の医学部で感じたことは「難しい病気の診断方法は教えてくれる、しかし治療の方法は教えてくれない」でした。

たとえば風邪の治療。風邪自体を治す「風邪薬」はなく、症状を緩和する治療薬(咳止めや解熱剤など)のみです。これでは『患者さんを治療する医療』ができません。そのとき思いついたのが、祖父や父が話していたこと。診断ではなく「患者さん」を、そして「病気」を治すのが漢方だということです。

●「陰」と「陽」の見極め
風邪には「葛根湯が効く風邪(陽証)」と「熱っぽい感じがない風邪(陰証)」のタイプがあります。このタイプの判断は極めて重要で、誤ると薬が効きません。たかが風邪、されど風邪、「風邪をしっかり治療できれば名医」と言われるほど、漢方の世界では「陰」と「陽」の見極めが大切なのです。

漢方は症状に適応した処方を選択できる漢方は症状に適応した処方を選択できる皆さんもご存知のとおり「この病気にはこの薬」と決まっているのが西洋医学です。一方、1つの症状でもたくさんの対処法を持つのが漢方です。

薬にも強い・弱いがあるのと同様、漢方にも強い・弱いがあります。たとえば体質が弱い患者さんに強い漢方を処方してしまうと、体調を悪化させてしまうこともありえます。このように「症状」だけでなく、患者さんの体質も見極めて処方する漢方を決める必要があります。つまり漢方は、症状の原因を考えて治療を進めることができるのです。

患者さんの中には、ご自身がインターネットで調べた処方を提示される方もいらっしゃいます。しかしその多くは「症状」または「疾患名」だけで導かれたもの。私たち漢方専門医は、漢方医学的診断に基づく処方をするため、疾患名だけで漢方を処方することはありません。もちろん患者さんには、疾患名とは別の治療のために処方することや、薬の説明書きとは異なる目的で使うことを説明します。

誤った知識を鵜呑みにせず、患者さんの体質や症状に合うよう処方された漢方を服用してください。

漢方の診察について

漢方の診察について漢方では患者さんに適応した処方を決める為に「証」を判定します。「証」の判定の為に四診という四種類の診察を行います。四診には望診、聞診、問診、切診の四種類があります。

1. 望診視覚による診察法を望診といい、四診のはじめです。望診には、骨格、筋肉、栄養状態、顔色などの観察と、舌診があります。
(1) 体格により虚実(体力の強弱)を判定する。
(2) 顔色、赤みの有無、紅潮のしかた、きたないなど。
(3) 舌診、舌苔の有無、色など。

2. 聞診聴覚、嗅覚による診察法といいます。
温清、咳嗽、喘鳴、呼吸音、?語(うわごと)、吃逆、噫気、口臭、体臭、排泄物、分泌物、(腹診の際に)胃内停水、腹中雷鳴などを判断します。

3. 問診患者さんの訴え、既往歴、家族歴、遺伝関係などの情報を聞き出します。現代医学の問診に近いものですが、証の決定に必要なポイントを聞いていきます。

4. 切診(1) 脈診
脈の状態により、陰陽、寒熱、虚実を判定します。

(2) 腹診
日本漢方独特の診察法で、陰陽、虚実を判定して、証を決定します。四診の中でも最も重視される診察です。
腹診では、皮膚の湿潤、完走、腹壁の厚薄、腹部動悸などを見ると同時に、漢方独特の各種腹証を確認していきます。

漢方一般、現代医学的には全科の疾患に対応します

治療対象となる疾患●消化器疾患
胃腸虚弱、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、急性慢性胃炎、胃十二指腸潰瘍、急性慢性腸炎、急性慢性肝炎、肝硬変、胆石症等

●アレルギー性疾患
アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、花粉症、気管支喘息等

●痛みの治療
慢性関節リウマチ、関節痛、腰痛、膝痛、変形性膝関節症、肩背痛、座骨神経痛、肋間神経痛、ヘルペス、ヘルペス後神経痛、慢性頭痛、偏頭痛など

●婦人科疾患
生理不順、生理痛、不妊症、冷え性、更年期障害、妊娠悪阻、婦人不定愁訴等

●循環器疾患
高血圧症、不整脈、動悸、虚血性心疾患、心不全等

●腎泌尿器疾患
急性慢性腎炎、ネフローゼ症候群、腎結石、尿路結石、腎盂炎、膀胱炎、尿道炎、前立腺肥大、前立腺炎等

●小児科疾患
小児虚弱、消化不良、夜尿症、夜啼症他、小児科各疾患

●精神神経疾患
神経症、パニック障害、不眠症、癲癇、躁鬱病等

その他、現代医学的には治療対象とならないような疾患、症状にも対応します。

風邪、インフルエンザと漢方

風邪薬は風邪を治さない!!風邪薬は風邪を治さない!!風邪をひくと熱が出ます。この発熱はウィルスの活動を弱めるために体が反応して熱を出しているのです。つまり体が風邪と闘ってる反応です。

一般的な風邪薬は熱を下げる作用を持っています。ちょっとした風邪ですぐに風邪薬を飲んで熱を下げることは、体の風邪との闘いを妨害するだけです。風邪薬を飲んだことによって風邪の回復が遅れて、なかなか治らないということはこのことを考えただけでも容易に想像できます。

風邪薬を飲んですぐに風邪が治ったと思っている人は、それだけ免疫力、抵抗力が強く、薬による解熱とともに治ったような気がしているということで、風邪薬は全く必要なかった、あるいは飲まなければもっと早く治ったということです。お年寄りや体力の弱い人は、いつまで風邪が治らず無熱性肺炎となり生命の危険にもなります。

風邪をひくとすぐに抗生物質を飲む人もいます。風邪というのはウィルスが原因で発症します。抗生物質はウィルスには全く無効です。抗生物質を飲むという行為は無意味です。

漢方ではこのような無意味な治療をせず、人間の身体の自然治癒力を高めて風邪を治します。風邪はひき初めは体表から始まり、だんだんと身体の深部に入っていくと考え、その風邪の位置(病位)に合わせ、また患者さんそれぞれの体力に合わせて治療をしていきます。今日はこの典型的な治療方法と薬についてさらにインフルエンザ治療への応用について簡単にお話しします。

自分にあった治療法が解らないときは、安静が一番、何か服用したいときは生姜湯を飲んで下さい。

風邪の漢方治療風邪の最も初期は多くは太陽病となる。

太陽病
病邪は体表にある。症状は悪寒、発熱、頭痛、咽頭痛、関節痛、四肢痛
脈は浮脈
治療方は体表より病邪を発散させる(発汗)。
虚証(体力の弱い人) = 自然発汗がある、脈が弱い → 桂枝湯、香蘇散
実証(体力の強い人) = 自然発汗がない、脈が強い → 葛根湯、麻黄湯

体力のある人、闘病反応の激しい時に用いる薬●葛根湯
【葛根湯の効く風邪】
1. 風邪の初期である(浮脈)
2. 体力は中等度以上(筋脈)
3. 自然発汗がない(虚証では自然発汗がある)
4. 肩がこる、首筋や背中が強ばる
5. 臍痛点

【構成生薬】
・葛根
クズの根、発汗解熱の作用があり、肩背のこりをとく。
・麻黄
発汗、利尿、治喘咳、鎮痛の効果がある。
・桂枝
中国南西部のクスノキ科の植物の枝の皮。通常は芳香性健胃駆風薬とされるが、薬能としては気の上衝を主治し、比較的体力の低下した人で、下腹部から突き上げる症状、頭痛、のぼせ、発熱、悪風、自汗、身体疼痛、胃腸を整えるなどに応用される。
・芍薬
芍薬(白花)の根。筋肉の緊張、弛緩を調整し、鬱血を去り、腹痛、下痢を治す。
・大棗
なつめの果実。緩和作用のある、強壮、利尿剤で鎮咳鎮痛の効がある。
・甘草
カンゾウの根。薬方の調味を図り、胃腸の機能を調整することによって主薬の作用を援助する。解毒、胸痛、腹満、腹痛などの薬能を期待、他生薬との配合で大きな効果を表している。
・生姜
カンゾウの根。薬方の調味を図り、胃腸の機能を調整することによって主薬の作用を援助する。解毒、胸痛、腹満、腹痛などの薬能を期待、他生薬との配合で大きな効果を表している。

●麻黄湯
葛根湯よりも体力が充実している場合。虚弱な人でも病状が激しい場合にには用いることがある。症状が葛根湯よりも激しく、発熱も高熱となる。葛根湯が肩、背の凝り程度であるのに対して、関節痛となる。
【構成生薬】
麻黄、杏仁、桂枝、甘草
杏仁
アンズの種の仁。鎮痛、鎮咳喘、利尿の効がある。

●大青竜湯
麻黄湯より更に実証で症状が強いもの。身体痛は筋肉痛にまで及び、口渇、煩躁(苦しくて居ても立っても居られない様な状態)を伴う。風邪ではほとんど使うことがないが症状の激しいインフルエンザには使われることが多い。素人判断での服用は厳禁。

【構成生薬】
麻黄、杏仁、桂枝、甘草、大棗、乾生姜、石膏
・石膏
軟石膏で天然の含水硫酸カルシウム。沈静、消炎、解熱の効がある。

虚証、体力の弱い人に用いる薬●桂枝湯
【構成生薬】
桂枝、芍薬、大棗、生姜(乾生姜1.0)各4.0/甘草2.0

【桂枝湯の使用目標】
平素から体力が弱く、風邪をひきやすく、疲れやすいような虚弱な人が
1. 脈が浮弱で、悪寒して発熱する。このとき頭痛がしたり、のぼせたり、自然発汗があったりする。
2. 熱が出て、発汗剤を与えて発汗したが、解熱せず悪寒が去らず、脈は依然浮弱の者。
3. 気の上衝。
4. 原因がはっきりせず、悪寒発熱が続く者。
脈浮弱は、脈が浮で、緊張力が弱く少し強く按ずると消えてしまうような脈である。之は表虚証を意味している。

傷寒論に桂枝湯の服用方法について、一服で汗が出て良くなったら後は飲む必要はない。もし汗が出なかったら、もう一度、前のように飲むと良い。それでもまだ汗が出なかったら、後で飲む分は自汗の間隔をつめて、半日ばかりの間に、三服を飲み尽くすようにする。もし病が重くて、良くならないときは、病の経過を観察しながら、一昼夜飲み続けて良い。とあるがこの記載を麻黄湯に適応してインフルエンザの治療に応用することがある。

●香蘇散
【構成生薬】
陳皮、香附子、蘇葉、甘草、乾生姜
・陳皮
ミカン科のウンシュウミカンの成熟した果皮。中国ではポンカン及びその近縁種が用いられる。未成熟な果皮を青皮と呼び、陳皮と使い分けられる。健胃、駆風、去痰、鎮咳作用があり、食欲不振や嘔吐、疼痛、咳嗽などに用いる。
・香附子
カヤツリグサ科のハマスゲの根茎。ひげ根、鱗葉を去ったものを「光香附」ともいう。中国(湖南、浙江、山東、河南省など)、朝鮮半島に産する。精油約1%を含む。通経、浄血、鎮痛薬として、月経不順、月経痛、神経症、諸種の胃・腹痛などに応用する。
・蘇葉
シソ科のシソまたはチリメンジソの葉。種子は紫蘇子と称し、葉と同様に用いる。中国、朝鮮半島、日本に広く産する。精油を含む。発汗、解熱、鎮咳、鎮痛薬として、気管支炎、胃腸炎などに去痰、消化促進の目的で応用する。また魚肉などの中毒に解毒薬として用いる。

香蘇散は軽い風邪に用いる最も使いやすい風邪薬、また神経精神的な原因の諸疾患、耳鳴り、難聴などにも効果のある処方である。食物が原因となる蕁麻疹にも有効である。

【香蘇散の使用目標】
1. 胃腸虚弱な人のかぜ、発熱の初期、葛根湯や麻黄湯は強すぎて、桂枝湯は胃にもたれるという人が、頭重、頭痛、悪寒、食欲不振を訴えて、熱が出たり風邪気味だというとき。
2. 平素虚弱で神経質、気分が憂鬱で胃が弱く、食欲不振、精神不安、頭痛のあるもの。
3. 魚、肉中毒による発疹、蕁麻疹。
4. 耳鳴り難聴に用いて効果があることがある。著者ははこの処方を耳鳴りに色々な処方と合方して用い、たびたび有効例を経験している。

少陰病、寒い風邪に使う薬●麻黄附子細辛湯
少陰病の風邪に使うのが麻黄附子細辛湯です。
【構成生薬】
麻黄、附子、細辛
・附子
トリカブトの塊根。興奮、鎮痛、治麻痺、新陳代謝機能を高め、四肢の厥冷を治する。
・細辛
ウスバサイシンの根。頭痛、関節痛、鼻閉を治し、鎮咳の効がある。

【麻黄附子細辛湯の使用目標】
体質が虚弱な人や体力が低下した人、少陰病の初期数日間、悪寒ばかりでほとんど熱感がなく、顔面蒼白で微熱、倦怠、無気力、脈は沈細で力がない。手足が冷え、咳、軽度の咽頭痛、四肢、関節痛などを訴える。脈は急性症では浮弱のこともある。少陰病の表熱裏寒で熱は仮の熱でこれを真寒仮熱という。

●少陽病
太陽病より移行する。発病3~4日から6~7日後の場合が多い。
症状: 胸脇苦満、往来寒熱、口苦、咽乾、舌苔、胸満、咳嗽、喀痰

●小柴胡湯
【構成生薬】
柴胡7.0/半夏5.0/生姜(乾1.0)4.0/黄? 、大棗、人参各3.0/甘草2.0

【使用目標】
1. 体力中等度以上
2. 往来寒熱(悪寒が止むと熱が出て、熱が下がると悪寒がする)
3. 胸脇苦満
一般の症状としては気分が重くて食欲がなく、胸苦しく、たびたび吐くようになる。胸苦しくても吐かず、口渇のあることがあり、腹が痛むことがあり、季肋下がつかえて硬くなり、心下部で動悸がして、尿利が減少することがあり、口渇がなくて、身に微熱あり、熱がうちにこっもていることもあり、咳が出ることがある。口が苦くなったり、舌に白苔がついたりすることがある。

●柴胡桂枝湯
【構成生薬】
柴胡5.0/半夏4.0/桂枝2.5/黄? 、人参、芍薬、生姜(乾1.0)/大棗各2.0/甘草1.5
柴胡桂枝湯は小柴胡湯に風邪の初期の処方である桂枝湯を合方した構成生薬で、つまり初期の症状も残している場合、発熱悪寒、節々が痛い、うずくという症状が残っている場合が適応となる。

【使用目標】
体力は中等度ないしやや低下した人が目標。急性感染症の場合は発熱してから数日が経過して、往来寒熱を呈し、悪寒、頭痛、悪心、嘔吐、腹痛などがあり、腹証としては胸脇苦満があり、両側の腹直筋の攣急(心下支結)が認められる。慢性病の場合は腹痛などの腹部症状、てんかん、神経症などの精神神経症状などに主に使われる。胃潰瘍や胆石症の痛みに非常に有効例が多く、また小児癲癇にも頻用される。

●柴胡桂枝乾姜湯
【構成生薬】
柴胡6.0/桂枝、括呂根、黄? 、牡蛎各3.0/乾姜、甘草各2.0

【使用目標】
この方は柴胡剤の中で最も虚した状態に用いられるものであり、一般的目標としては、小柴胡湯証に準じ、しかも身体虚弱で体力が衰え、或いは長年の病気で衰弱しているような状態の者に用いられる。胸脇がつかえて苦しく、往来寒熱或いは微熱があり、食欲が無く、寒気が多く、頭痛、咳、盗汗などがあり、患者はやせがたで貧血気味、疲れやすく動悸息切れがしやすい、ときに腹痛が起こり、尿利が減少することがある。特徴は、汗は顔面や頭部からでやすく、口乾や軽い口渇があり、胸腹の動悸が亢進していまして、脈も、腹も緊張が弱く、胸脇苦満があるがたいていは軽いものである。

【古人による応用のこつ】
1. 下痢が長い間やまず、あるいは下痢が止んで、脈が数で、食欲がない、あるいは、口渇があって腹中にどうきがあるものは柴胡桂枝乾姜湯がよい。
2. 喘息でさむけがして熱があり、胸部の動悸の激しいもの。
3. 耳鳴りで、動悸が上がって耳に響くもの。
4. 労状(肺結核のような症状)のようで、咳がよく出て、白沫を吐し、声がよくでないで、往来感熱往来寒熱するもの。
5. 腹診すると、腹じゅうに網のように動悸があり、小便が淋瀝するもの、婦人帯下があって小便が淋瀝するものによい。
6. 長い間、赤白帯下を患って、痩せて力が無く、往来感熱往来寒熱して渇するものを治す。
7. 小児の疳症(神経質)はいろいろあるが、胸脇満して微結するものはこの方がよい。

●参蘇飲
【構成生薬】
紫蘇葉、枳殻、乾生姜、木香、甘草各1.0/桔梗、陳皮、葛根、前胡各2.0/半夏、茯苓各3.0/人参、大棗各1.5

【使用目標】
使用目標は虚証で振水音の著明なものの感冒で発熱、頭痛、咳嗽、痰を喀出し、心下が痞えて張り、嘔吐して水を吐くような者。

渋谷漢方セミナー0909

疲労、夏ばて疲労、夏ばて疲労
疲労は痛み、発熱と並んで生体の3大アラームといわれ、身体にとって生命と健康を維持する上で重要な信号の一つです。健常者における生理的疲労は、精神あるいは身体に負荷を与えた際に作業効率が一過性に低下した状態と定義できます。通常、休息を求める欲求と不快感(いわゆる倦怠感)を伴うことが多い。忙しい現代社会では、あなたも私も、子供も中年も老人も、みんなが疲れています。

疲労感を自覚している人 約60%
そのうち37%が6ヶ月以上疲れを感じている「慢性疲労」(1998年厚生労働省調査)

疲労とは、一般的には心神が消耗し回復のための休息を必要としている状態とされています。つまり、疲労には肉体的のものと精神的なものとがあり、通常はこの双方が複合した状態が疲労として感じられています。現代人の疲労の原因はストレスによる脳の疲れが主と考えられ、身体症状はその結果と考えられます。そして疲労が溜まると、単に「疲れた」という状態にとどまらず、仕事や勉強などの効率を低下させたり、ミスが生じやすくなったりします。

「疲れている」っていやな感覚ですが、これがないと多分休むことなく働き続けて、やがて過労死を迎えることになるでしょう。つまり脳が発するSOS信号と考えることが出来ます。

疲労のメカニズム(次のようなものが考えられている)・エネルギー源の不足
・エネルギー供給が十分でも、強度あるいは長時間の負荷により疲労は起きる。
・疲労物質の蓄積
・電解質代謝異常や脱水
・脳の調整力の失調
・セロトニン等による中枢性疲労

疲労の回復と予防・睡眠
・入浴
・マッサージ、指圧
・体操
・音楽療法、アロマセラピー等
・笑い
・薬、栄養剤
・嗜好品(茶、コーヒー、酒等)

疲労の漢方治療補中益気湯
【構成生薬】
黄蓍、人参、朮各4.0/当帰3.0/陳皮、大棗各2.0/甘草1.5/柴胡1.0/乾姜、升麻各0.5
・黄蓍
中国産マメ科の植物(ナイモウオウギ、キバナオウギ)の根。強壮剤で皮膚の栄養を良くし、血圧降下の作用がある。
・人参
御種人参と書いてオタネニンジンという。朝鮮人参、薬用人参、高麗人参とも称される。強壮、強精、健胃、滋潤。胃の衰弱、痞?に伴う新陳代謝機能の低下等に伴って起きる食欲不振、悪心嘔吐、消化不良、下痢などに応用される。
・朮
オケラ(ホソバオケラ)の根。利尿、鎮痛。
・当帰
トウキの根。補血、鎮痛、強壮。婦人病を対象とした方剤に多く配合される。
・陳皮
ウンシュウミカンの皮。健胃、鎮咳、鎮嘔。
・大棗
棗の果実。緩和作用のある、強壮、利尿剤で鎮咳、鎮痛の効がある。
・甘草
カンゾウの根。鎮痛、解毒、緩和包摂の作用がある。他生薬との配合で大きな効果を表す。
・柴胡
ミシマサイコの根。肝臓の機能を調整し、解毒、解熱、鎮静の効がある。
・乾姜
生姜の根を蒸して乾燥したもの。健胃、鎮嘔ならびに手足の厥冷を治する。
・升麻
サラシナショウマの根茎。解毒、鎮痛、特に口内の疾病に用いる。痔に効がある。

【補中益気湯の使用目標】
目標としては虚証で体力がおとろえて、元気がなく、衰弱の傾向があり、食欲不振、倦怠、頭痛、悪寒、自汗、身熱、微熱などのあるものに用いる。柴胡剤なので、軽い胸脇苦満があっても良い。本方の使用目標としては津田玄仙が療治経験筆記にあげている諸点が有名なのでそれを紹介する。

1. 手足倦怠。手足の倦怠。
2. 言語軽微。言語に力がない。
3. 眼勢無力。目の光がにぶく力がない。患者さんが眼が云々というときに眼に力が入らない感じですか、などと聞くと、そういう感じですと答えることがありこれがこの症状だろうと考えている。
4. 口中白沫を生ず。
5. 食失味。食味がない。
6. 好熱湯。熱いものを飲食することを好む。
7. 当臍動気。臍のところに動悸がある。
8. 脈散大而無力。脈が散大で力がない。

という点をあげている。特にこのような目標がなくとも、虚証で疲れやすいというような人には用いてよい処方だと考えている。

【補中益気湯の使用経験】
75歳の女性。目の疲れ体の疲れで来院。眼の疲れはひどくテレビを見ることも出来ない。家族から疲れた様子を見ているだけでもつらくなると言われる。
服用2ヶ月でテレビを楽に見ていられるようになった。服用5ヶ月で、とても元気になり、病院まで4km歩いてきた。30kgの味噌を炊いた。という著効例。

【古典の記載】
虚を表現する記載が大変多く認められる。清気下陥、脾胃の元気が下陥、脾胃虚弱、脾胃の虚と消化機能の低下、元気不足、元気の乏しい、陽気下陥、陽虚、表虚、極虚の病人、大病後の虚人と虚の状態がいろいろと記載されている。病態としては内傷、内証、瘧、中風(脳卒中による半身不随)痔、脱肛などがあげられている。症状は発熱、悪寒、頭痛、四肢(手足)倦怠、食欲不振、心煩などがある。これに対する薬効として、元気を益す、虚熱をしりぞける、脾胃を補う、気血を生じるなどと述べられている。

夏ばて夏の暑さによる自律神経系の乱れに起因して現れる様々な症状。

●原因
人間の体は、高温・多湿な状態では体温を一定に保とうとしてエネルギーを消費し、かなりの負担がかかる。通常は負担に耐えることができるが、特に負担が強い場合や、長引いたりすると体に溜まった熱を外に出すことが出来なくなる。この状態が続いて様々な症状が現れるのが夏バテである。原因として挙げられるものに自律神経のバランスの乱れがある。前述の通り、暑くなると、体は体温を保とうとするが、汗をかいたり血管を広げたりして体温を逃がそうとするのは自律神経の働きによる。

冷房の無かった時代は猛暑による体力低下・食欲不振などいわゆる「夏やせ」と呼ばれる症状が主であったが、空調設備が普及した現代では気温と湿度の急激な変化により自律神経のバランスが崩れて起こることが多い。ストレスや冷房による冷え、睡眠不足なども原因となる。「夏バテ」という名称から夏のみの病気であると思われがちだが、気候の変化が激しい梅雨や初夏にも起こりやすい。

●症状
主な症状は、全身の倦怠感・思考力低下・食欲不振・下痢・便秘など。時に頭痛・発熱・めまいを伴うこともある。

夏ばてと鰻と万葉集石麻呂に我れ物申す夏痩せによしといふものぞ鰻捕り食せ(大伴家持)
『石麻呂どのに、私は申し上げます。夏痩せによいと言われておりますぞ。ウナギをとってお食べ下さい。』
痩す痩すも生けらばあらむをはたやはた鰻を捕ると川に流るな『痩せておりましても生きていられればよいのですから、やはりまたウナギをとうろうとして川に流されますな。』

夏ばての漢方治療清暑益気湯
【構成生薬】
人参、白朮、麦門冬各3.5/五味子、陳皮、甘草、黄柏各2.0/当帰、黄蓍各3.0
・麦門冬
ジャノヒゲの塊根。滋潤、去痰、鎮咳。
・五味子
チョウセンゴミシの果実。強精、強壮の効のある鎮咳剤。
・黄柏
キワダの樹皮。健胃整腸消炎の効があり、内服、外用とも用いる。

【清暑益気湯の使用目標】
俗にいう夏まけの処方である。大便は軟便で、からだがだるく、脚膝の力が抜け、気ぶしょうになり、食が進まず、次第に痩せる俗にいう夏やせというものである。

●症例
小学6年生男児。日曜日に夏に映画を見に行く。映画館は冷房はありませんが冷風が吹いていますと書いてあったが、温風が吹いておりひどく暑かった。映画の後に食堂に入り昼食を食べることになったが全く食欲がない。その後一週間全く食欲がなくほとんど食事をすることがなかった。
翌日曜日、母親の実家へ行き、祖父の診察を受ける。処方は清暑益気湯であった。一服飲むとすぐに食欲がもどり一週間分を取り戻すかのように美味しく沢山食事が出来た。以後全く平素の状態にもどった。

勿誤薬室方函
「この方は注夏病を主とす。「医学入門」に春末夏初にあう毎に、頭いたみ、脚なえ、食少なく、体熱するは、注夏病と名づく。之を治する方は補中益気湯より升麻、柴胡を去り、黄柏、芍薬、五味子、麦門冬を加う、云々」
「然れども注夏病は大抵この方を服せしめ、「万葉集」に拠って鰻れいを餌食とし、閨房を遠ざくれば、秋冬に至って復する者なり。」
大伴家持
「石まろに我れもの申す夏やせによしというものぞむなぎとなりせめ」

衆方規矩(曲真瀬道三)
清暑益気湯は、長夏の湿熱が人を蒸して、四肢がだるくて苦しみ、気分が沈んで動作がにぶる、胸が満ち、気息が急迫し、手足の節々が痛む、あるいは息切れしてせわしく喘ぐ、全身に発熱して蒸しあつい、心下が悶える。また小便は赤くて頻数、大便はゆるく頻りにもよおす、あるいは下痢する、あるいは渇して食欲がない、自汗が出る、身体が重い、このような症状を呈するものを治す。

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