渋谷漢方セミナー0909

疲労、夏ばて疲労、夏ばて疲労
疲労は痛み、発熱と並んで生体の3大アラームといわれ、身体にとって生命と健康を維持する上で重要な信号の一つです。健常者における生理的疲労は、精神あるいは身体に負荷を与えた際に作業効率が一過性に低下した状態と定義できます。通常、休息を求める欲求と不快感(いわゆる倦怠感)を伴うことが多い。忙しい現代社会では、あなたも私も、子供も中年も老人も、みんなが疲れています。

疲労感を自覚している人 約60%
そのうち37%が6ヶ月以上疲れを感じている「慢性疲労」(1998年厚生労働省調査)

疲労とは、一般的には心神が消耗し回復のための休息を必要としている状態とされています。つまり、疲労には肉体的のものと精神的なものとがあり、通常はこの双方が複合した状態が疲労として感じられています。現代人の疲労の原因はストレスによる脳の疲れが主と考えられ、身体症状はその結果と考えられます。そして疲労が溜まると、単に「疲れた」という状態にとどまらず、仕事や勉強などの効率を低下させたり、ミスが生じやすくなったりします。

「疲れている」っていやな感覚ですが、これがないと多分休むことなく働き続けて、やがて過労死を迎えることになるでしょう。つまり脳が発するSOS信号と考えることが出来ます。

疲労のメカニズム(次のようなものが考えられている)・エネルギー源の不足
・エネルギー供給が十分でも、強度あるいは長時間の負荷により疲労は起きる。
・疲労物質の蓄積
・電解質代謝異常や脱水
・脳の調整力の失調
・セロトニン等による中枢性疲労

疲労の回復と予防・睡眠
・入浴
・マッサージ、指圧
・体操
・音楽療法、アロマセラピー等
・笑い
・薬、栄養剤
・嗜好品(茶、コーヒー、酒等)

疲労の漢方治療補中益気湯
【構成生薬】
黄蓍、人参、朮各4.0/当帰3.0/陳皮、大棗各2.0/甘草1.5/柴胡1.0/乾姜、升麻各0.5
・黄蓍
中国産マメ科の植物(ナイモウオウギ、キバナオウギ)の根。強壮剤で皮膚の栄養を良くし、血圧降下の作用がある。
・人参
御種人参と書いてオタネニンジンという。朝鮮人参、薬用人参、高麗人参とも称される。強壮、強精、健胃、滋潤。胃の衰弱、痞?に伴う新陳代謝機能の低下等に伴って起きる食欲不振、悪心嘔吐、消化不良、下痢などに応用される。
・朮
オケラ(ホソバオケラ)の根。利尿、鎮痛。
・当帰
トウキの根。補血、鎮痛、強壮。婦人病を対象とした方剤に多く配合される。
・陳皮
ウンシュウミカンの皮。健胃、鎮咳、鎮嘔。
・大棗
棗の果実。緩和作用のある、強壮、利尿剤で鎮咳、鎮痛の効がある。
・甘草
カンゾウの根。鎮痛、解毒、緩和包摂の作用がある。他生薬との配合で大きな効果を表す。
・柴胡
ミシマサイコの根。肝臓の機能を調整し、解毒、解熱、鎮静の効がある。
・乾姜
生姜の根を蒸して乾燥したもの。健胃、鎮嘔ならびに手足の厥冷を治する。
・升麻
サラシナショウマの根茎。解毒、鎮痛、特に口内の疾病に用いる。痔に効がある。

【補中益気湯の使用目標】
目標としては虚証で体力がおとろえて、元気がなく、衰弱の傾向があり、食欲不振、倦怠、頭痛、悪寒、自汗、身熱、微熱などのあるものに用いる。柴胡剤なので、軽い胸脇苦満があっても良い。本方の使用目標としては津田玄仙が療治経験筆記にあげている諸点が有名なのでそれを紹介する。

1. 手足倦怠。手足の倦怠。
2. 言語軽微。言語に力がない。
3. 眼勢無力。目の光がにぶく力がない。患者さんが眼が云々というときに眼に力が入らない感じですか、などと聞くと、そういう感じですと答えることがありこれがこの症状だろうと考えている。
4. 口中白沫を生ず。
5. 食失味。食味がない。
6. 好熱湯。熱いものを飲食することを好む。
7. 当臍動気。臍のところに動悸がある。
8. 脈散大而無力。脈が散大で力がない。

という点をあげている。特にこのような目標がなくとも、虚証で疲れやすいというような人には用いてよい処方だと考えている。

【補中益気湯の使用経験】
75歳の女性。目の疲れ体の疲れで来院。眼の疲れはひどくテレビを見ることも出来ない。家族から疲れた様子を見ているだけでもつらくなると言われる。
服用2ヶ月でテレビを楽に見ていられるようになった。服用5ヶ月で、とても元気になり、病院まで4km歩いてきた。30kgの味噌を炊いた。という著効例。

【古典の記載】
虚を表現する記載が大変多く認められる。清気下陥、脾胃の元気が下陥、脾胃虚弱、脾胃の虚と消化機能の低下、元気不足、元気の乏しい、陽気下陥、陽虚、表虚、極虚の病人、大病後の虚人と虚の状態がいろいろと記載されている。病態としては内傷、内証、瘧、中風(脳卒中による半身不随)痔、脱肛などがあげられている。症状は発熱、悪寒、頭痛、四肢(手足)倦怠、食欲不振、心煩などがある。これに対する薬効として、元気を益す、虚熱をしりぞける、脾胃を補う、気血を生じるなどと述べられている。

夏ばて夏の暑さによる自律神経系の乱れに起因して現れる様々な症状。

●原因
人間の体は、高温・多湿な状態では体温を一定に保とうとしてエネルギーを消費し、かなりの負担がかかる。通常は負担に耐えることができるが、特に負担が強い場合や、長引いたりすると体に溜まった熱を外に出すことが出来なくなる。この状態が続いて様々な症状が現れるのが夏バテである。原因として挙げられるものに自律神経のバランスの乱れがある。前述の通り、暑くなると、体は体温を保とうとするが、汗をかいたり血管を広げたりして体温を逃がそうとするのは自律神経の働きによる。

冷房の無かった時代は猛暑による体力低下・食欲不振などいわゆる「夏やせ」と呼ばれる症状が主であったが、空調設備が普及した現代では気温と湿度の急激な変化により自律神経のバランスが崩れて起こることが多い。ストレスや冷房による冷え、睡眠不足なども原因となる。「夏バテ」という名称から夏のみの病気であると思われがちだが、気候の変化が激しい梅雨や初夏にも起こりやすい。

●症状
主な症状は、全身の倦怠感・思考力低下・食欲不振・下痢・便秘など。時に頭痛・発熱・めまいを伴うこともある。

夏ばてと鰻と万葉集石麻呂に我れ物申す夏痩せによしといふものぞ鰻捕り食せ(大伴家持)
『石麻呂どのに、私は申し上げます。夏痩せによいと言われておりますぞ。ウナギをとってお食べ下さい。』
痩す痩すも生けらばあらむをはたやはた鰻を捕ると川に流るな『痩せておりましても生きていられればよいのですから、やはりまたウナギをとうろうとして川に流されますな。』

夏ばての漢方治療清暑益気湯
【構成生薬】
人参、白朮、麦門冬各3.5/五味子、陳皮、甘草、黄柏各2.0/当帰、黄蓍各3.0
・麦門冬
ジャノヒゲの塊根。滋潤、去痰、鎮咳。
・五味子
チョウセンゴミシの果実。強精、強壮の効のある鎮咳剤。
・黄柏
キワダの樹皮。健胃整腸消炎の効があり、内服、外用とも用いる。

【清暑益気湯の使用目標】
俗にいう夏まけの処方である。大便は軟便で、からだがだるく、脚膝の力が抜け、気ぶしょうになり、食が進まず、次第に痩せる俗にいう夏やせというものである。

●症例
小学6年生男児。日曜日に夏に映画を見に行く。映画館は冷房はありませんが冷風が吹いていますと書いてあったが、温風が吹いておりひどく暑かった。映画の後に食堂に入り昼食を食べることになったが全く食欲がない。その後一週間全く食欲がなくほとんど食事をすることがなかった。
翌日曜日、母親の実家へ行き、祖父の診察を受ける。処方は清暑益気湯であった。一服飲むとすぐに食欲がもどり一週間分を取り戻すかのように美味しく沢山食事が出来た。以後全く平素の状態にもどった。

勿誤薬室方函
「この方は注夏病を主とす。「医学入門」に春末夏初にあう毎に、頭いたみ、脚なえ、食少なく、体熱するは、注夏病と名づく。之を治する方は補中益気湯より升麻、柴胡を去り、黄柏、芍薬、五味子、麦門冬を加う、云々」
「然れども注夏病は大抵この方を服せしめ、「万葉集」に拠って鰻れいを餌食とし、閨房を遠ざくれば、秋冬に至って復する者なり。」
大伴家持
「石まろに我れもの申す夏やせによしというものぞむなぎとなりせめ」

衆方規矩(曲真瀬道三)
清暑益気湯は、長夏の湿熱が人を蒸して、四肢がだるくて苦しみ、気分が沈んで動作がにぶる、胸が満ち、気息が急迫し、手足の節々が痛む、あるいは息切れしてせわしく喘ぐ、全身に発熱して蒸しあつい、心下が悶える。また小便は赤くて頻数、大便はゆるく頻りにもよおす、あるいは下痢する、あるいは渇して食欲がない、自汗が出る、身体が重い、このような症状を呈するものを治す。

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