麻黄湯、小青竜湯

数日前、朝食を摂りながらふと見ると、食卓の向こう側に坐って食事をしている小学一年生のお孫(女児)の、鼻孔に水が溜まっている。ハナミズだなと瞬時に感じたので、「"ゆうか"は風邪ひいてるようだよ」と妻に声をかけ、「小青竜湯を服ませなさいよ」とつけ加えた。

食事が終わってすぐ、妻が小青竜湯エキス剤をもって来て服ませていた。間もなく、学校へ行こうとする孫が、玄関を出る時、ごほんごほんと軽いながら咳をしたのが聞こえた。「やっぱり風邪だ」と思われた。 孫が学校から帰ってからは、母親が小青竜湯エキス剤を続けて服ませていたようだ。そして三日後の朝には、孫は変わった様子もみせず、食事をして学校へ行った。風邪は治ったようだった。

年上の孫は、小学四年生で元気もの。十月末日迄、半袖の夏服で登校していたが、十一月からは学校の規則なので、不承不承、冬の制服に着換えて行っている。この姉娘が、幼い頃は、冬になると度々風邪をひいて熱を出した。大抵三十八度余りで、それは桂麻各半湯を煎じて服ませると、一日か二日で解熱して元気になった。

私は子供の熱発には、桂麻各半湯を使うのが常套手段である。この薬方は、虚実中等度から比較的虚証の子供に対応してくれる。

ところで、上の孫ができて約三年後に、下の孫が生まれた。上の孫が活発なのに、下の孫は小さな時からおとなしくて、泣くこともめったになく、多分、母親は育てるのが楽だったろうと思う。この子も矢張り、冬になると、時々風邪で熱発した。

ところが、熱が出ると平素のおとなしさに似合わず高熱を発した。三十九度ぐらいはすぐに出る。私が坐って膝に抱くと、おとなしく抱かれるが、ひどい熱感が伝わるのである。初めこの子に、例によって桂麻各半湯を服ませたが、熱はいっこうに下がらず二日三日と続いた。「おかしいな、困ったな」と思っていたところ、男親(私の長男)はさすがに親で「この子は意外に実証らしいから、麻黄湯にしてみよう」と云ってそれを服ませてみた。

すると驚くほど効いて、翌朝平熱になっていた。孫は二人共同級生の中では小さなほうで、太ってもいないが、体質は違うようである。爾来、下の孫には、熱発の際は麻黄湯を使って事なきを得ている。いずれにしても、風邪をひいたなと見たら直ぐ漢方薬を服ませるので、今は大抵、二,三日で治っている。

それでも、小学校へ入る頃は、時として風邪が直ぐ治らず、咳が長引くことがあった。そういう時は、前記のような調子の咳で、小青竜湯を数日服ませると鎮静した。 

ところで小青竜湯の証は、虚実間乃至やや虚証で、喘鳴を伴う咳が出て、息切れもし、くしゃみやハナミズが多く、喀痰は泡の多い水様のものとなっている。

ところが、私の末娘は、幼少から殆ど病気もせず、親に心配を余りかけない娘だった。しかし、幼い頃は、時として風邪をひいて、咳が長く続いたことがある。熱も出ないのに、乾いた様な咳で、痰も殆ど出さない。子供のことだから、出た痰をのみ込んでしまったかもしれないが。初めは葛根湯、小柴胡湯、華蓋散等を服ませたが、少しも効果がない。困り果てて、念の為と思いながら小青竜湯を服ませたところ、二日ぐらいで咳が止まって元気になった。

その後、娘は咳が少し出ると、調剤室へ一人で行って、小青竜湯エキス剤のボトルを取って、勝手に服むことが度々だった。小青竜湯証の咳に、例外があることを教えられたのである。その娘、今は二歳になる女児の母親になった。

98-1月

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